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相続人全員の参加が必要? 遺産分割の正しい進め方

ある人が亡くなると、法的には、『相続』が生じます。
相続とは、亡くなった方の権利・義務を承継させていく手続きのことであり、亡くなった方を『被相続人』、権利義務を受け継いでいく方を『相続人』といいます。
相続手続のなかには色々な手続き・法的行為があり、重要な手続きのひとつが、『遺産分割』です。
今回は、遺産分割の進め方ついて説明します。

相続人全員で遺産分割協議書を作成する

遺産分割とは、被相続人の財産を誰がどのように取得するか、相続人間で決めることをいいます。
相続人が一人だけであれば遺産分割をする必要はありませんが、相続人が複数人いる場合には、遺産分割をする必要があります。
遺産分割には、裁判所が関与する調停手続(遺産分割調停)や審判手続(遺産分割審判)があります。
また、特に裁判所の関与なく相続人間で話し合って決めることを『遺産分割協議』といいます。
裁判所は関与しませんが、遺産分割協議の段階で弁護士が代理人として関与しているケースはあります。

この遺産分割は、相続放棄手続をとった相続人がいる場合を除き、相続人全員で行う必要があります。
したがって、相続人のうち、一部の者だけで遺産分割を行った場合や、相続人の一部の者が脱漏していた場合、当該遺産分割は基本的には無効となります。

遺産分割協議は理屈としては口頭でも成立しますが、分割の話し合いが整えば、『遺産分割協議書』を作成するのが一般です。
遺産分割協議書の形式等は決まっていません。
内容としては、どの相続人がどの遺産を取得するのかを明記します。
そして、作成年月日を記載したうえで、全相続人が自署・押印するのが一般的です。
押印も、実印で行います。
登記手続実務や銀行手続実務では、実印の押印のある遺産分割協議書でないと手続がスムーズに進みません。

そういった意味からも、法的には口頭でも協議が成立するとはいえ、やはり、全相続人の署名押印のある遺産分割協議書をきちんと作るべきでしょう。
署名押印は、一堂に会して行うほか、いわゆる持ち回り方式でもよいとされています。
また、たとえば6人の相続人がいる場合、遺産分割協議書原本を全相続人分(6人分)作ることもありますし、原本は一通だけ作るということもあり得ます(もちろん、全相続人分の協議書原本を作る方が無難ではあります)。

遺産分割協議に参加しない相続人がいたら?

遺産分割協議がスムーズにいけば、遺産分割協議書を作ることにより、遺産分割が無事、終了することになります。

しかし、不仲であったり、疎遠であったりして『遺産分割協議に参加したくない』という相続人がいる場合にはどうすればよいでしょうか。

先述の通り、遺産分割は全相続人で実施する必要があります。
したがって、「遺産分割協議に参加したくない」という相続人がいたら、その人を除いて分割協議をすることはできない、ということになります。

このような場合は、家庭裁判所に『遺産分割調停』を申立てることになります。
遺産分割調停事件が受理されれば、裁判所から当該相続人に呼出状が行き、裁判所に来るよう要請がなされます。
『調停』は裁判所が関与するとはいえ話合いの手続きですので、そこで遺産分割に関する話合いをしていくことになります。

それでは、「遺産分割協議に参加したくない」という相続人が、裁判所の呼出しも無視して裁判所に来なかった場合はどうなるでしょうか。
その場合は、通常、『調停手続』から『審判手続』に移行し、遺産分割審判という手続きが行われます。
遺産分割審判の期日を経て、最終的には、裁判所が、どの遺産をどの相続人に承継させるのかを決めます。

これまでの内容は、遺産分割の内容の一部であり、なおかつ、典型的なケースを前提としています。
実際には、とてつもなく複雑な状況の相続や、対立の激しい相続もあります。
相続や遺産分割は日常生活において馴染みがなく、難解なものが多いといえます。
基本的な流れを早めに確認し、ほかの相続人と認識をすり合わせておきましょう。

※本記事の記載内容は、2022年4月現在の法令・情報等に基づいています。

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