不動産登記とは? 登記できる9つの権利について解説!

不動産の売買や相続の際には不動産登記という手続きが必要です。
不動産登記は不動産の現況と権利を公示するもので、私たちの財産を守るうえで重要な役割を担っています。
不動産登記できる権利はいくつもあり、登記を行う際には個々の権利の違いについて理解しておく必要があります。
今回は不動産登記に関わる権利について解説します。

不動産登記できる9つの権利
不動産にかかわる権利には、『所有権』『地上権』『永小作権』『地役益権』『先取特権』『質権』『抵当権』『賃借権』『採石権』の9種類があります。
売買などによって土地や建物に関するこれらの権利を取得した場合、その旨を登記する必要があります。
まず、それぞれの権利について説明しましょう。
所有権とは、法令の制限内で自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利のことです。
たとえば、不動産を購入して所有権を得た場合は、その不動産に関してなんら制約を受けない完全な権利が所有権だということができます。
地上権とは、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利のことです。
地上権が認められている場合、土地の所有者の許諾がなくても、土地の貸し出しや建物の売却、担保の設定が可能です。
これらを行う際に許諾が必要な賃借権とは異なります。
永小作権とは、地主に小作料を支払って他人の土地で耕作または牧畜をする権利のことです。
現在では、あえてこの登記をしなくとも農地の賃貸借で支障がないことから、永小作権を登記する例はほとんどありません。
地益権とは水道管やガス管の埋設する場合など、一定の目的のために他人の土地を使用する権利のことです。
先取特権とは、ほかの債権者よりも優先的に債務者の弁済を受けることができる権利を指します。
先取特権は民法によって定められた権利であり、債権者と債務者の間に契約がなくても一定の条件に該当すれば登記することができます。
一方、抵当権は、債権者と抵当権設定者の契約がなければ登記することはできません。
質権とは、債権者が債務者(または物上保証人)から物を受け取って占有し、債務が弁済されなかったときにはその物を売却して、その売却価額から債権の弁済を受けることができるという担保物権のことです。
質権には抵当権とは異なり留置的効力があり、質権者は質権を設定した不動産を使用して収益を受けることができます。
ここが抵当権との大きな違いです。
抵当権とはいわゆる『担保に入れる』権利です。
たとえば住宅ローンを借りた場合、当該住宅に金融機関が抵当権を設定し、万が一住宅ローンが返済できない場合には、抵当権が行使され不動産を競売にかけて売却代金から回収に充てます。
本来、所有者は抵当権が設定された不動産を自由に使用して収益を受けることができますが、住宅ローンのように金融機関から融資を受けている場合は注意が必要です。
抵当権設定契約書には、不動産を処分する際、抵当権者の承諾を要する旨の条項が入っているのが一般的で、その契約に基づいて不動産の売却には金融機関の承諾が必要となります。
不動産賃借権とは、賃貸借契約に基づき借りた人(賃借人)が土地、建物を使用できる権利(債権)です。
賃借人は契約の範囲で目的物を使用し収益できる一方、貸主に賃料を支払わなければなりません。
採石権とは、他人の土地で岩石や砂利などを採取する権利です。
採石権の存続期間は契約によって定めた20年以内の期間になります。
もし自分で不動産登記をするなら
不動産の売買や相続の際には不動産登記を行い、取得した権利を公示することが必要です。
その手続きは専門家に依頼するのが一般的ですが、自分で行うこともできます。
法務局では登記手続きの概要について電話で案内してくれますので、手続きを始める前に問い合わせをしてもよいでしょう。
また、現在では、不動産登記についてオンラインでも申請が可能です。
登記申請書やその記載例については、法務局のWebサイトからダウンロードすることができます。
記載例にならって必要事項を記入し、印鑑証明書や住民票などの必要書類とともに法務局へ提出します。
書類提出後、不備がなければ法務局で登記が行われ、登記完了証と登記識別情報通知書を受け取れば手続きは完了します。
自身で行うことができるとはいえ、どの権利を設定すべきか分からない時や、登記手続きに不安を感じている場合には司法書士などの専門家へ相談してみましょう。
※本記事の記載内容は、2022年11月現在の法令・情報等に基づいています。
不動産登記と登記できる権利に関するよくあるご質問
Q1.不動産登記とは何ですか?
A.土地や建物の所在・面積・構造・所有者・担保権などを登記簿に記録し、社会に公示する制度です。
不動産登記簿には、大きく分けて「不動産の表示に関する情報」と「不動産の権利に関する情報」が記録されます。
土地の所在、地番、地目、地積や、建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積などは表題部に記録されます。
所有者の住所・氏名、所有権の移転原因、抵当権、賃借権などの権利関係は権利部に記録されます。
不動産の現況と権利関係を公示することで、不動産取引の安全を確保し、所有者や権利者の財産を守る役割があります。
Q2.不動産登記簿の表題部と権利部は何が違いますか?
A.表題部には不動産の物理的な状況、権利部には所有権や抵当権などの権利関係が記録されます。
土地の表題部には、所在、地番、地目、地積などが記録されます。建物の表題部には、所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが記録されます。
権利部は、さらに甲区と乙区に分かれています。
- 甲区:所有権に関する事項
- 乙区:抵当権、地上権、賃借権など、所有権以外の権利に関する事項
不動産の所有者を調べる場合は甲区、住宅ローンの担保や土地利用権などを確認する場合は乙区を確認します。
Q3.不動産登記ができる権利は何種類ありますか?
A.現在の不動産登記法では、次の10種類の権利を登記できます。
- 所有権
- 地上権
- 永小作権
- 地役権
- 先取特権
- 質権
- 抵当権
- 賃借権
- 配偶者居住権
- 採石権
以前は9種類でしたが、2020年4月1日に配偶者居住権の制度が始まり、登記できる権利が10種類となりました。
Q4.所有権とはどのような権利ですか?
A.法令や他人の権利による制限の範囲内で、不動産を使用し、収益を得て、処分できる権利です。
不動産の所有者は、その土地や建物を自分で利用したり、第三者へ貸したり、売却・贈与したりできます。
ただし、所有権があれば不動産を無制限に利用できるわけではありません。建築基準法、都市計画法、農地法などの法令や、抵当権、賃借権、地役権などの他人の権利による制限を受けることがあります。
売買、贈与、相続などによって所有者が変わった場合は、所有権移転登記を行います。
Q5.地上権とはどのような権利ですか?
A.他人の土地に建物や工作物、竹木を所有するため、その土地を使用できる権利です。
例えば、他人の土地に建物を建てて所有する場合や、道路、鉄道、送電線、地下施設などを設置する場合に地上権が設定されることがあります。
地上権は土地そのものを直接支配する物権であり、土地の賃借権と比べて権利者の法的地位が強いとされています。
ただし、権利の内容、存続期間、地代、譲渡などについては、設定契約や法令による制限を確認する必要があります。
Q6.永小作権とはどのような権利ですか?
A.小作料を支払い、他人の土地で耕作または牧畜をする権利です。
永小作権は、農地などを継続的に利用して、耕作や牧畜を行うための物権です。
名称に「永」とありますが、必ず永久に続く権利という意味ではありません。設定された期間や民法上の規定に従います。
現在は農地の賃貸借などが利用されることが多く、新たに永小作権が設定・登記される事例は一般的には多くありません。
Q7.地役権とはどのような権利ですか?
A.自分の土地の利便性を高めるため、一定の目的で他人の土地を利用できる権利です。
地役権によって利益を受ける土地を「要役地」、利用される側の土地を「承役地」といいます。
代表的なものには、次のような地役権があります。
- 他人の土地を通行する通行地役権
- 水道管や排水管を設置するための地役権
- 送電線を設置するための地役権
- 眺望や日照を確保するための地役権
単に特定の人が便利になるためではなく、原則として要役地となる土地の便益のために設定されます。
Q8.先取特権とはどのような権利ですか?
A.法律で定められた一定の債権について、ほかの債権者より優先して弁済を受けられる権利です。
先取特権は、当事者が担保権設定契約を結ぶことによってではなく、法律で定められた要件を満たすことによって成立する担保物権です。
不動産に関する先取特権には、不動産の保存、不動産工事、不動産売買に関するものがあります。
ただし、ほかの権利者や第三者に対して優先権を主張するためには、法律で定められた要件や登記が必要になる場合があります。
Q9.質権とはどのような権利ですか?
A.債権の担保として財産を支配し、返済されない場合にその財産から優先的に弁済を受ける権利です。
不動産に設定する質権を、不動産質権といいます。
不動産質権者は、設定契約に別段の定めがない限り、不動産の用法に従って使用し、収益を得ることができます。
所有者が不動産を引き続き使用できる抵当権とは異なり、不動産質権では、質権者が不動産を占有して使用・収益する点が特徴です。
Q10.抵当権とはどのような権利ですか?
A.不動産を所有者の手元に残したまま、住宅ローンなどの債務の担保とする権利です。
住宅ローンを借りる場合、金融機関が土地や建物へ抵当権を設定するのが一般的です。
所有者は、抵当権が設定された後も自宅に住み続けたり、不動産を使用したりできます。
しかし、返済ができなくなった場合、抵当権者は不動産を競売し、その売却代金からほかの一般債権者に優先して返済を受けられます。
Q11.抵当権が付いた不動産は売却できますか?
A.売却すること自体は可能ですが、抵当権は原則として売却後も不動産に残ります。
抵当権が設定されていても、所有者が不動産を第三者へ売却すること自体が当然に禁止されるわけではありません。
ただし、購入者は抵当権が付いた不動産を取得することになるため、通常の不動産売買では、売却代金などによって住宅ローンを完済し、抵当権を抹消します。
そのため、実務上は売買契約を締結する前に金融機関へ連絡し、返済額や抵当権抹消書類の受取方法を確認する必要があります。
Q12.賃借権とはどのような権利ですか?
A.賃貸借契約に基づき、賃料を支払って土地や建物を使用・収益できる権利です。
賃借権は、地上権などの物権とは異なり、原則として貸主と借主との契約に基づく債権です。
土地の賃借権について登記を行えば、土地の所有者が変わった場合などにも、新しい所有者へ賃借権を主張できる可能性があります。
ただし、建物の賃貸借や借地関係では、借地借家法によって、登記以外の方法でも第三者に権利を主張できる場合があります。
Q13.地上権と土地の賃借権は何が違いますか?
A.地上権は土地を直接支配する物権、賃借権は原則として貸主に土地を使用させてもらう債権です。
地上権者は、設定された権利の範囲内で土地を直接使用でき、一般的には賃借権より強い権利として扱われます。
一方、賃借権は賃貸借契約を基礎とするため、権利の譲渡や転貸などに貸主の承諾が必要になるのが原則です。
ただし、借地借家法が適用される土地の賃借権には、借主を保護するためのさまざまな規定があります。実際の権利関係は契約書や登記内容を確認して判断します。
Q14.配偶者居住権とはどのような権利ですか?
A.亡くなった人の配偶者が、相続開始時に住んでいた建物へ、終身または一定期間、無償で住み続けられる権利です。
配偶者居住権は、遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判などによって取得することがあります。
例えば、自宅の所有権を子が相続し、配偶者が配偶者居住権を取得することで、配偶者の住居を確保しながら、所有権を子へ承継させることが可能になります。
配偶者居住権を第三者に主張するためには登記が重要です。
Q15.配偶者居住権は、土地にも登記できますか?
A.いいえ。配偶者居住権の設定登記ができるのは、配偶者が居住している建物です。
建物の敷地となっている土地に、配偶者居住権そのものを登記することはできません。
また、配偶者居住権を取得しても、建物の所有権を取得するわけではありません。建物の所有者と配偶者居住権を持つ人が別になることがあります。
配偶者居住権の設定後は、建物の修繕、固定資産税、通常の必要費などの負担関係についても確認する必要があります。
Q16.配偶者短期居住権も登記できますか?
A.配偶者短期居住権は、配偶者居住権とは異なり、不動産登記法上の登記対象には含まれていません。
配偶者短期居住権は、相続開始時に被相続人の建物へ無償で住んでいた配偶者について、遺産分割が成立するまでなど、一定期間の居住を保護する権利です。
一定の要件を満たすと法律上成立する権利であり、遺産分割などによって取得する配偶者居住権とは仕組みが異なります。
Q17.採石権とはどのような権利ですか?
A.他人の土地で岩石や砂利などを採取するため、その土地を使用できる権利です。
採石権は、採石法に基づく物権であり、土地所有者との設定契約などによって成立します。
採石権の存続期間は設定行為によって定めますが、20年以内とされています。
一般の住宅や相続で目にする機会は多くありませんが、採石場や山林などに関係する不動産では、登記の有無を確認する必要があります。
Q18.不動産に関する権利は、登記しなければ成立しませんか?
A.登記がなくても当事者間で権利が成立する場合がありますが、第三者へ権利を主張するには登記が重要です。
例えば、不動産の売買では、原則として当事者の合意によって所有権が移転します。
しかし、所有権移転登記をしないまま売主が同じ不動産を別の人へ売却した場合などには、先に登記を得た人との関係で所有権を主張できない可能性があります。
登記は、権利を社会に公示し、第三者との関係で権利を保護するために重要な手続です。
Q19.相続によって不動産を取得した場合、登記は必要ですか?
A.はい。2024年4月1日から相続登記が義務化されています。
相続または遺言によって不動産の所有権を取得した相続人は、原則として、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
遺産分割協議が成立した場合は、その協議によって不動産を取得した相続人が、遺産分割成立日から3年以内に登記を申請します。
正当な理由なく申請義務に違反した場合、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
Q20.相続人同士で遺産分割がまとまらない場合はどうすればよいですか?
A.相続人申告登記を利用することで、相続登記の申請義務を履行できる可能性があります。
相続人申告登記は、登記名義人が亡くなったことと、自分がその相続人であることを法務局へ申し出る制度です。
比較的簡易な手続で相続登記の申請義務を履行できますが、不動産の所有者や持分を確定する正式な相続登記ではありません。
その後、遺産分割協議が成立した場合は、実際に不動産を取得した相続人が、成立日から3年以内に遺産分割の内容に基づく登記を申請する必要があります。
Q21.引っ越しや結婚で住所・氏名が変わった場合、変更登記は必要ですか?
A.はい。2026年4月1日から、住所・氏名等の変更登記が義務化されています。
不動産の所有権登記名義人は、住所や氏名・名称が変わった日から2年以内に変更登記を申請する必要があります。
2026年4月1日より前に住所や氏名が変わっており、現在も登記が変更されていない場合も義務化の対象です。
正当な理由なく申請しなかった場合は、5万円以下の過料の対象になる可能性があります。
Q22.不動産登記は自分で申請できますか?
A.はい。当事者本人が登記申請を行うことも可能です。
本人申請では、登記申請書の作成、戸籍や住民票などの必要書類の収集、登録免許税の計算などを自分で行います。
本人申請によって専門家への報酬を抑えられますが、登記原因、申請人、持分、添付書類などを誤ると、補正や申請のやり直しが必要になることがあります。
過去の相続登記が終わっていない、相続人が多い、権利関係が複雑、住宅ローンが関係するなどの場合は、司法書士への相談を検討することが重要です。
Q23.不動産登記はオンラインでも申請できますか?
A.はい。不動産登記の多くは、登記・供託オンライン申請システムから申請できます。
ただし、オンライン申請では、電子署名や申請用ソフトの操作が必要になる場合があります。
相続登記では、戸籍謄本などが紙で発行されていることがあるため、オンラインで申請情報を送信した後、添付書類を法務局へ郵送または持参することがあります。
オンラインで申請した場合は、申請後の補正や取下げ、登記完了証の交付などもオンラインで行うのが原則です。
Q24.法務局では、登記申請書を作成してもらえますか?
A.法務局では一般的な手続案内を受けられますが、申請書の作成代行や個別の法的判断は受けられません。
法務局の登記手続案内では、一般的な申請方法、申請書の様式、必要書類などについて説明を受けられます。
一方、どの権利を設定すべきか、遺産分割をどのような内容にすべきか、契約が法的に有効かといった個別の判断は行ってもらえません。
また、手続案内を受けたことによって、申請が必ず受理されることや登記が完了することが保証されるわけではありません。
Q25.不動産登記は誰に相談すればよいですか?
A.権利に関する登記は司法書士、土地・建物の表示に関する登記は土地家屋調査士が主な専門家です。
司法書士が担当する主な登記には、次のようなものがあります。
- 相続や売買による所有権移転登記
- 所有権保存登記
- 抵当権設定・抹消登記
- 配偶者居住権設定登記
- 住所・氏名変更登記
土地家屋調査士が担当する主な登記には、建物表題登記、建物滅失登記、土地分筆登記、地積更正登記、地目変更登記などがあります。
相続税の計算、土地の相続税評価、小規模宅地等の特例、二次相続などの税務については、税理士へ相談します。
Q26.登記が完了すると、必ず登記識別情報が発行されますか?
A.登記によって新たに登記名義人となった場合などに、登記識別情報が通知されます。
登記識別情報は、従来の権利証に代わる12桁の符号で、将来の売却や抵当権設定などの登記で本人確認に使用します。
住所変更登記や抵当権抹消登記など、登記の種類によっては新たな登記識別情報が通知されないことがあります。
登記識別情報は原則として再発行されないため、第三者に内容を見られないよう厳重に管理する必要があります。
※現在の不動産登記法では、所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権、配偶者居住権、採石権の10種類が登記できる権利として定められています。
※登記の要否や必要書類は、権利の種類、取得原因、契約内容、不動産の状況などによって異なります。
※相続税申告や税務相談は税理士、不動産の権利に関する登記は司法書士、表示に関する登記や測量は土地家屋調査士が担当します。
※本記事は2026年7月時点の法令および法務省・法務局の公表情報をもとに作成しています。

















