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『自筆証書遺言書保管制度』とは? 制度概要を解説

遺言には、作成方法にいくつかの種類があります。
そのうち最も簡単に作成することができるのが自筆証書遺言です。
ただ、自筆証書遺言の保管は自己責任であり、紛失や偽造といったリスクがつきまといます。
また、相続人が遺言書の存在に気付かず、故人の意向が反映されない可能性もあります。
このような問題を解消するため、2018年の法改正により『自筆証書遺言書保管制度』が新設されました。
今回は本制度の概要について解説します。

自筆証書遺言書保管制度の特色と詳細

自筆証書遺言書保管制度とは、遺言書の紛失や偽造を防止し、遺言者の死後、遺言の存在を相続人に把握してもらうことを目的とした制度です。
公的機関である法務局(遺言書保管所)に、自筆証書遺言の原本を預けることで、原本は遺言者の死後50年間、画像データは遺言者の死後150年間、保管してもらうことができます。
手数料も3,900円と、公正証書遺言作成にかかる費用よりも安価です。

また、あらかじめ希望をしていれば、遺言者の死亡を遺言書保管所が把握した際に、遺言者が定めた通知対象者(相続人等)1名に対し、遺言書が保管されていることが通知されます。
このように、本制度によって、自筆証書遺言書の存在を相続人に知らせることが可能になりました。
さらに、従来、自筆証書遺言では必要だった『検認手続』が、本制度では不要となりました。
検認手続とは、家庭裁判所において相続人等の立会いのもと、遺言書の内容を確認するものです。
本制度に基づいて保管された遺言書は、その内容が原本のみでなく画像データでも保存されるため、わざわざ裁判所において内容の確認をする必要がないとの考慮から、検認が不要となりました。

本制度に基づき一度保管所に預けた遺言書であっても、遺言者として、内容をもう一度確認したい場合には、閲覧を請求することができます。
また、遺言の内容を変更したい場合などには、保管の撤回を申請することで、遺言をつくり直すことも可能です。

自筆証書遺言書保管制度の注意点

このように、自筆証書遺言書保管制度は便利な制度ですが、利用するにあたって以下の点に注意する必要があります。
まず、本制度に基づいて遺言書を預けるには、遺言書保管官によって遺言書の確認が行われます。
しかし、この確認は外形的な記載(自署、押印等)についてのみで、遺言書の内容や有効性については確認されません。
そのため、遺言書を作成し、保管所に預けたものの、死後有効な遺言書として取り扱われないこともあります。
遺言書の記載事項や表現、有効性などに不安がある場合には、文献を参考にする、専門家に相談する、公正証書遺言の作成を検討するなどといった対策をおすすめします。

また、本制度に基づく保管の申請や保管の撤回の申請等は、遺言者本人でなければ行うことができません。
さらに、これらの申請をするには、遺言者本人が遺言書保管所に出頭する必要があります。
これは遺言書の偽造を防ぐための措置であり、委任状等による代理申請ができない点には注意が必要です。

なお、本制度にかかわるすべての手続は、事前予約が必要となります。
事前予約の方法や、各種申請に必要な書類、制度についての詳細なQ&Aについては、法務局のWebサイトに記載されています。

自筆証書遺言書保管制度は、遺言者の意向を伝えるうえで非常に役立つ制度です。
遺言書の保管を依頼できる点や家族への通知など、大きなメリットがあります。
しかし、その一方で、本人による手続きや遺言書の有効性の確認が必要であるなど、注意しなければならない点もいくつかあります。
これらの内容をよく理解して、自身の最期の意志を確実にご家族等に伝えるためにも、本制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

※本記事の記載内容は、2022年12月現在の法令・情報等に基づいています。

よくあるご質問

Q1.自筆証書遺言書保管制度とは、どのような制度ですか?

A.自分で作成した自筆証書遺言を、法務局で保管してもらえる制度です。

自筆証書遺言書保管制度は、自筆証書遺言の原本と画像データを法務局で管理・保管する制度です。

自宅で保管する場合に生じやすい遺言書の紛失、亡失、隠匿、破棄、改ざんなどのリスクを軽減できます。

また、遺言者が希望した場合には、遺言者の死亡後、指定した人へ遺言書が保管されていることを知らせる通知制度も利用できます。

Q2.自筆証書遺言書保管制度は、いつから始まりましたか?

A.2020年7月10日から始まりました。

2018年に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立・公布され、その法律に基づいて2020年7月10日から制度の運用が始まりました。

制度が始まる前に作成した自筆証書遺言でも、現在の保管制度の様式や自筆証書遺言の要件を満たしていれば、保管を申請できる場合があります。

Q3.この制度を利用する主なメリットは何ですか?

A.遺言書の紛失や改ざんを防ぎ、相続開始後の検認手続を不要にできることです。

主なメリットとして、次の点が挙げられます。

  • 遺言書の原本を法務局で保管してもらえる
  • 紛失、破棄、隠匿、改ざんのリスクを軽減できる
  • 遺言者の死亡後に通知してもらえる制度がある
  • 家庭裁判所による検認手続が不要になる
  • 相続人等が全国の遺言書保管所で証明書を取得できる
  • 公的機関で遺言書の存在と内容を確認できる

ただし、法務局が遺言内容の適切性や法的有効性を保証する制度ではありません。

Q4.法務局に保管すれば、遺言書の有効性も保証されますか?

A.いいえ。法務局で保管されても、遺言内容の法的有効性が保証されるわけではありません。

保管申請の際には、遺言書保管官が、自書、日付、氏名、押印、余白などの外形的な様式を確認します。

一方、誰にどの財産を渡すかという内容が法的に適切か、財産の記載が正確か、遺留分を侵害していないか、遺言者に遺言能力があったかなどについては審査されません。

形式上は保管できても、相続開始後に内容の解釈をめぐって争いになったり、遺言の全部または一部が無効と判断されたりする可能性があります。

Q5.自筆証書遺言は、どこまで手書きする必要がありますか?

A.原則として、遺言書の本文、作成日付、遺言者の氏名を本人が自書し、押印する必要があります。

遺言書の本文をパソコンで作成したり、家族に代筆してもらったりした場合は、現在の自筆証書遺言の要件を満たさない可能性があります。

日付についても、「令和○年○月吉日」のように日付を特定できない書き方は避け、具体的な年月日を記載します。

また、書き間違いを訂正する場合には、法律で定められた方法に従って訂正する必要があります。

Q6.財産目録もすべて手書きする必要がありますか?

A.いいえ。財産目録はパソコンで作成したり、資料のコピーを添付したりできます。

自筆証書遺言の本文は原則として本人が自書する必要がありますが、財産目録については、パソコンで作成することができます。

不動産の登記事項証明書、預金通帳のコピー、証券会社の残高資料などを財産目録として添付する方法も可能です。

ただし、自書していない財産目録を使用する場合は、目録のすべてのページに遺言者が署名・押印する必要があります。両面に記載がある場合は、両面への署名・押印が必要です。

Q7.遺言書の保管申請には、いくらかかりますか?

A.遺言書1通につき3,900円です。

法務局へ支払う保管申請手数料は、申請1件、遺言書1通につき3,900円です。手数料は収入印紙で納付します。

保管申請を撤回して遺言書の返還を受ける手続や、遺言者の住所等の変更届出には、原則として手数料がかかりません。

なお、遺言書の内容について弁護士、司法書士、税理士などへ相談する場合は、法務局の手数料とは別に専門家への報酬が発生することがあります。

Q8.どこの法務局でも保管を申請できますか?

A.遺言者の住所地、本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所へ申請します。

全国すべての法務局・出張所が遺言書保管所になっているわけではありません。

保管申請ができるのは、原則として次のいずれかを管轄する遺言書保管所です。

  • 遺言者の住所地
  • 遺言者の本籍地
  • 遺言者が所有する不動産の所在地

一度遺言書を預けた後、原本を閲覧したり保管申請を撤回したりする場合は、原則として、その遺言書を保管している遺言書保管所で手続を行います。

Q9.保管申請には、どのようなものが必要ですか?

A.遺言書、保管申請書、住民票、顔写真付き身分証明書、手数料などが必要です。

一般的には、次のものを用意します。

  • 所定の様式を満たした自筆証書遺言
  • 遺言書保管申請書
  • 本籍と戸籍の筆頭者が記載された住民票の写し等
  • 顔写真付きの公的な本人確認書類
  • 3,900円分の手数料

遺言書は封筒に入れず、複数枚ある場合もホチキスでとじずに持参します。

住民票には、原則としてマイナンバーや住民票コードを記載しないよう注意が必要です。

Q10.家族や専門家に保管申請を代理してもらえますか?

A.いいえ。保管申請は遺言者本人が遺言書保管所へ出向いて行う必要があります。

家族、弁護士、司法書士などによる代理申請や、郵送による保管申請はできません。

これは、遺言者本人の意思を確認し、第三者によるなりすましや偽造を防止するためです。

申請書の作成や遺言内容について事前に専門家のサポートを受けることはできますが、最終的な保管申請は遺言者本人が行います。

Q11.病気や入院で法務局へ行けない場合も利用できますか?

A.本人が遺言書保管所へ出向けない場合は、原則として保管制度を利用できません。

保管申請では遺言者本人の出頭が必要であり、職員に自宅や病院へ出張してもらう制度はありません。

介助のために付添人と一緒に来庁することは可能ですが、代理人だけで申請することはできません。

病気や身体上の事情により外出が難しい場合は、公証人が病院や自宅へ出張して作成できる公正証書遺言を検討する方法があります。

Q12.法務局での手続には予約が必要ですか?

A.遺言書保管所の窓口で行う手続は、原則として事前予約が必要です。

保管申請、原本の閲覧、保管申請の撤回など、遺言書保管所の窓口で行う手続は予約制です。

予約は、法務局手続案内予約サービス、電話、遺言書保管所の窓口などから行います。当日の予約はできないため、余裕を持って予約する必要があります。

一方、住所等の変更届出や証明書の交付請求など、郵送で行える一部の手続については、郵送であれば予約は不要です。

Q13.遺言者が亡くなったら、家族に自動的に通知されますか?

A.すべての家族や相続人へ自動的に通知されるわけではありません。

通知には、「指定者通知」と「関係遺言書保管通知」の2種類があります。

指定者通知は、遺言者が保管申請時などに通知を希望し、通知対象者を指定していた場合に行われます。

関係遺言書保管通知は、相続人等の一人が遺言書情報証明書を取得した場合や、遺言書を閲覧した場合に、ほかの相続人、受遺者、遺言執行者などへ遺言書が保管されていることを知らせる制度です。

Q14.指定者通知では、何人まで通知対象者を指定できますか?

A.現在は3名まで指定できます。

指定者通知は、法務局が遺言者の死亡を確認した場合に、遺言書が保管されていることを指定した人へ知らせる制度です。

2023年10月2日から、通知対象者を3名まで指定できるようになりました。

通知対象者は、推定相続人、受遺者、遺言執行者に限られず、遺言書の存在を確実に伝えておきたい人を指定できます。

ただし、通知を受けた人が相続人、受遺者、遺言執行者などに該当しない場合、その人が遺言書の内容を閲覧できるとは限りません。

Q15.通知対象者の住所が変わった場合はどうすればよいですか?

A.法務局へ変更の届出を行うことが重要です。

通知対象者、受遺者、遺言執行者などの氏名や住所が変わった場合、変更の届出を行わないと、遺言者の死亡後に通知が届かない可能性があります。

変更の届出は、全国の遺言書保管所で行うことができ、郵送による届出も可能です。

遺言者自身が転居した場合も、住所変更の届出を忘れないようにする必要があります。

Q16.法務局で保管した遺言書も、家庭裁判所の検認が必要ですか?

A.いいえ。自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書は、家庭裁判所の検認が不要です。

自宅などで保管されていた通常の自筆証書遺言は、相続開始後、原則として家庭裁判所へ提出し、検認を受ける必要があります。

法務局で保管されている遺言書は、原本と画像データが公的に管理され、保管後の改ざんなどを防止できるため、検認手続が不要とされています。

ただし、検認が不要であることと、遺言内容が法的に有効であることは別の問題です。

Q17.相続人は、どのように遺言書の内容を確認しますか?

A.遺言者の死亡後、遺言書情報証明書の交付や遺言書の閲覧を請求します。

相続人、受遺者、遺言執行者などの関係相続人等は、遺言者の死亡後に次の手続を利用できます。

  • 遺言書が保管されているかを確認する遺言書保管事実証明書の請求
  • 遺言書の内容が画像で記載された遺言書情報証明書の請求
  • モニターによる遺言書の閲覧
  • 保管されている遺言書原本の閲覧

遺言書情報証明書は、相続登記や預貯金の解約など、遺言書に基づく相続手続で使用することが想定されています。

Q18.保管した遺言書の内容を変更できますか?

A.保管中の遺言書に直接加筆・修正することはできないため、新しい遺言書を作成する必要があります。

内容を変更したい場合は、新しい遺言書を作成し、必要に応じて現在の保管申請を撤回したうえで、新しい遺言書の保管を申請します。

新しい遺言書を追加で保管する場合は、原則として、すでに遺言書を保管している遺言書保管所へ申請します。

複数の遺言書が存在する場合は、作成日の新しい遺言によって、古い遺言の抵触する部分が撤回されたものとして扱われる可能性があります。内容を変更するときは、古い遺言との関係を明確にすることが重要です。

Q19.保管申請を撤回すれば、遺言書も無効になりますか?

A.いいえ。保管申請の撤回と、遺言そのものの撤回は別の問題です。

保管申請の撤回は、法務局での保管を終了し、遺言書の返還を受ける手続です。

返還された遺言書を自宅などで保管している場合、保管制度から外れたというだけで遺言書の効力が直ちになくなるわけではありません。

遺言内容を撤回・変更したい場合は、新しい遺言書を適切に作成するなど、遺言そのものを撤回するための対応が必要です。

Q20.遺言書は法務局でいつまで保管されますか?

A.原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは死亡後150年間保管されます。

法務局では、自筆証書遺言の原本と画像データを長期間にわたって管理します。

自宅での保管と異なり、引っ越しや災害、家族による誤廃棄などによって遺言書を紛失するリスクを軽減できます。

ただし、遺言者が生前に保管申請を撤回した場合は、原本が遺言者へ返還され、法務局での保管は終了します。

Q21.自筆証書遺言書保管制度と公正証書遺言は、どちらを選ぶべきですか?

A.財産や家族関係、遺言内容の複雑さ、本人の健康状態などによって適した方法が異なります。

自筆証書遺言書保管制度は、本人が遺言書を作成し、比較的低い手数料で法務局へ保管できることが特徴です。

一方、公正証書遺言は、公証人が遺言内容を確認して公正証書として作成します。原則として証人2名が必要ですが、形式不備によって無効となるリスクを抑えやすく、病気などで外出できない場合には公証人の出張を依頼できることがあります。

相続人が多い、不動産が多い、法定相続人以外へ財産を渡したい、遺留分をめぐる争いが予想される場合などは、公正証書遺言も含めて検討することが重要です。

Q22.遺言書の内容は、誰に相談すればよいですか?

A.相談内容に応じて、弁護士、司法書士、税理士、公証人などへ相談します。

遺言の有効性、遺留分、相続人間の紛争が懸念される場合は、弁護士への相談を検討します。

遺言に基づく不動産の相続登記や登記手続については、司法書士が専門となります。

財産の分け方による相続税額、小規模宅地等の特例、二次相続、生前贈与などの税務面については、税理士がシミュレーションを行います。

公正証書遺言を作成する場合は、公証役場の公証人が遺言書を公正証書として作成します。

Q23.パソコンやスマートフォンで遺言本文を作成できますか?

A.2026年7月時点では、自筆証書遺言の本文を電子データだけで作成することはできません。

現在の自筆証書遺言は、財産目録を除き、遺言書の本文、日付、氏名を遺言者本人が手書きする必要があります。

2026年6月には、電子データ等で作成する新たな遺言制度を創設する改正法が公布されましたが、2026年7月時点ではまだ施行されていません。

新制度が利用できるようになるまでは、現在の自筆証書遺言の作成要件に従う必要があります。

※自筆証書遺言書保管制度は、法務局が遺言書の内容や法的有効性を保証する制度ではありません。

※遺言書の作成方法、通知制度、必要書類、手数料などは、法令改正や運用変更によって変わる可能性があります。

※遺言内容によって相続税や遺留分、相続登記に影響が生じることがあります。必要に応じて弁護士、司法書士、税理士、公証人などへご相談ください。

※本記事は2026年7月時点の法令および法務省の公表情報をもとに作成しています。

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