小規模宅地等の特例を使い2次相続までトータルに考えた結果、相続税が減額できたケース
相続の概要
お母様がお亡くなりになられたAさん(会社員)。
法定相続人は、被相続人の配偶者であるお父様と息子のAさんの2名。
遺産総額は約1億5500万円。Aさんはご両親と同居されていました。
遺産分割の話し合いで、お父様が相続されても、すぐにまたお父様の相続が発生(2次相続)することになるから、全てAさんが相続すればいいだろう、ということになっていました。
浜松相続税あんしん相談室からのご提案
Aさんが全ての遺産を取得する形で相続税の申告書を作成してほしい、と事務所にいらっしゃったAさん。
確かに、1次相続で配偶者の税額軽減に頼り過ぎると、2次相続で多額の相続税を納付しなければならなくなることは、よくあるお話です。
しかし、1次相続で全くその配偶者の税額軽減を使わないというのも、それはそれで勿体ないといえます。
Aさんは、ご両親と同居されていますので、小規模宅地等の特例を上手に使うことで相続税を減額させることが可能と判断しました。
そこで、2次相続までトータルで考え、5パターンのシミュレーションで相続税の納税額の合計がどのように変わるかを丁寧に説明させていただきました。
結果
具体的な数字を示すことで、お客様にベストな形を選択していただいた結果、2次相続まで含めた納税額の合計を約480万円減額することができました。
よくあるご質問
Q1.二次相続とは何ですか?
A.夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が亡くなったときに発生する次の相続を、一般的に二次相続といいます。
例えば、母親が先に亡くなり、父親と子が財産を相続するのが一次相続です。その後、父親が亡くなり、子が父親の財産を相続することが二次相続です。
一次相続で父親が取得した財産は、原則として父親自身の財産に加わります。そのため、一次相続の税額だけでなく、将来その財産を子が相続するときの税額まで考えることが重要です。
Q2.なぜ一次相続だけでなく、二次相続まで試算する必要があるのですか?
A.一次相続の税額が最も少ない遺産分割が、二次相続まで含めても最も有利になるとは限らないためです。
一次相続では配偶者の税額軽減を利用できるため、配偶者が多くの財産を取得すると、一次相続の税負担を抑えやすくなります。
しかし、配偶者が取得した財産は、将来の二次相続で配偶者の相続財産に含まれます。その結果、二次相続の課税財産が増え、子どもの相続税負担が大きくなる可能性があります。
反対に、一次相続で子どもが多くの財産を取得すれば二次相続の財産は抑えられますが、一次相続の納税額が増えることがあります。
Q3.配偶者の税額軽減とは、どのような制度ですか?
A.配偶者が実際に取得した正味の遺産額について、一定額まで配偶者の相続税を軽減できる制度です。
配偶者が取得した正味の遺産額が、次のいずれか多い金額までであれば、原則として配偶者に相続税はかかりません。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
本事例では、被相続人の配偶者であるお父様と、子であるAさんが法定相続人です。この場合、お父様の法定相続分は原則として2分の1となります。
ただし、配偶者の税額軽減を適用するには、原則として相続税申告書と必要書類を提出する必要があります。
Q4.配偶者がすべての財産を相続すれば、最も節税できますか?
A.一次相続の税額は抑えやすくなりますが、二次相続まで含めて最も有利になるとは限りません。
本事例の遺産総額は約1億5,500万円であり、一定の前提では、お父様がすべて取得しても配偶者の税額軽減によって、お父様の納付税額を大きく抑えられる可能性があります。
しかし、お父様が取得した約1億5,500万円は、お父様がもともと所有していた預貯金や不動産などに加わります。その後のお父様の相続では、これらの財産が二次相続の課税対象になる可能性があります。
お父様の既存財産が多い場合は、一次相続で取得する財産を増やし過ぎない方が、二次相続までの税負担を抑えられることがあります。
Q5.子どもがすべての財産を相続すれば、二次相続対策になりますか?
A.二次相続の財産を抑えられる可能性はありますが、必ず最も有利になるわけではありません。
Aさんが一次相続ですべての財産を取得すれば、お母様の財産がお父様の財産に加わらないため、将来の二次相続財産を抑えることができます。
一方で、Aさんには配偶者の税額軽減を適用できません。そのため、一次相続の時点で多額の相続税が発生する可能性があります。
また、お父様の今後の生活費や医療費、介護費をどの財産から支払うかという問題もあります。税額だけでなく、残された配偶者の生活保障も考えて遺産分割を決める必要があります。
Q6.本事例の相続税の基礎控除はいくらですか?
A.一次相続の基礎控除は4,200万円です。
相続税の基礎控除は、次の計算式で求めます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
本事例の一次相続では、お父様とAさんの2人が法定相続人であるため、基礎控除は次の金額です。
3,000万円+600万円×2人=4,200万円
遺産総額約1億5,500万円がそのまま課税価格となる前提では、基礎控除を超えるため、相続税申告が必要になる可能性があります。
Q7.二次相続では基礎控除が少なくなりますか?
A.法定相続人が減る場合は、二次相続の基礎控除も少なくなります。
将来のお父様の相続で、法定相続人がAさん1人だけであると仮定すると、二次相続の基礎控除は次の金額になります。
3,000万円+600万円×1人=3,600万円
一次相続の基礎控除4,200万円に比べて600万円少なくなります。
また、一次相続では利用できた配偶者の税額軽減も、子どもだけが相続する二次相続では利用できません。これらが二次相続の税負担が増えやすい理由です。
Q8.小規模宅地等の特例とは何ですか?
A.被相続人の自宅や事業に使用されていた一定の土地について、相続税評価額を減額できる制度です。
被相続人が住んでいた自宅の土地が特定居住用宅地等に該当する場合、原則として330平方メートルまでの部分について、相続税評価額を80%減額できます。
例えば、適用対象となる自宅の土地の評価額が5,000万円で、その全体が限度面積内であれば、相続税の計算上の評価額を1,000万円まで減額できる可能性があります。
土地の時価や売却価格が下がる制度ではなく、相続税を計算する際の評価額を減額する制度です。
Q9.配偶者と同居していた子のどちらが自宅を相続しても、特例を使えますか?
A.どちらが取得する場合も適用できる可能性がありますが、取得者によって要件が異なります。
被相続人の配偶者が自宅の土地を取得する場合は、特定居住用宅地等に関する取得者ごとの居住継続要件や保有継続要件はありません。
被相続人と同居していた子が取得する場合は、原則として相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、土地を申告期限まで保有する必要があります。
本事例ではAさんがご両親と同居していたため、実際の居住状況や申告期限までの保有状況などの要件を満たせば、Aさんが取得する土地について特例を適用できる可能性があります。
Q10.小規模宅地等の特例は、一次相続と二次相続の両方で使えますか?
A.それぞれの相続で適用要件を満たしていれば、同じ自宅の土地について一次相続と二次相続の両方で適用できる可能性があります。
例えば、一次相続でお父様が自宅の土地を取得し、その後も自宅として使用した場合、その土地は将来のお父様の相続財産になります。
二次相続で同居していたAさんが土地を取得し、居住・保有などの要件を満たせば、二次相続でも小規模宅地等の特例を適用できる可能性があります。
ただし、建物の構造、実際の居住状況、土地の面積、誰が土地を所有していたかなどによって判断が異なります。
Q11.本事例で約480万円減額できたのは、小規模宅地等の特例だけが理由ですか?
A.小規模宅地等の特例だけではなく、配偶者の税額軽減と財産の取得割合を組み合わせた結果です。
小規模宅地等の特例によって自宅の土地評価を減額しても、その土地をお父様とAさんのどちらが取得するかによって、一次相続と二次相続の税額が変わります。
また、お父様が取得する財産には配偶者の税額軽減を適用できるため、配偶者の取得額を適切に設定することで、一次相続の税負担を抑えられます。
本事例では、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、お父様とAさんの取得割合を組み合わせた5つの案を比較し、一次相続と二次相続の合計税額が少なくなる分割方法を選択しました。
Q12.二次相続のシミュレーションでは、どのような項目を確認しますか?
A.一次相続の財産だけでなく、配偶者がもともと所有している財産や将来の財産増減も確認します。
一般的には、次のような項目を確認します。
- 一次相続の遺産総額と財産の内訳
- 自宅の土地の評価額と面積
- 配偶者がもともと所有している預貯金や不動産
- 一次相続で配偶者と子が取得する財産の割合
- 配偶者の税額軽減の適用額
- 小規模宅地等の特例の適用対象者
- 二次相続時の法定相続人の人数
- 将来の生活費、医療費、介護費などによる財産の減少見込み
- 不動産や有価証券の価格変動
- 生命保険や生前贈与などの対策
二次相続の発生時期や将来の財産額を正確に予測することはできないため、一定の前提を置いて複数のパターンを比較します。
Q13.お父様の固有財産が多いと、遺産分割に影響しますか?
A.はい。お父様がすでに多くの財産を所有している場合、一次相続で取得する財産が増えるほど、二次相続の税負担も増えやすくなります。
例えば、お父様がもともと預貯金や賃貸不動産を多く所有している場合、そこへお母様の財産を加えると、二次相続時の課税財産が大きくなる可能性があります。
一方、お父様の固有財産が少なく、今後の生活費や介護費を確保する必要がある場合は、一次相続で一定の財産をお父様が取得する必要があります。
一次相続の遺産だけを見て取得割合を決めるのではなく、配偶者自身の財産と生活資金も確認することが重要です。
Q14.配偶者の税額軽減は、最大まで使った方がよいですか?
A.必ずしも最大まで利用することが、家族全体の相続税を最も少なくするとは限りません。
配偶者の税額軽減を最大限利用すれば、一次相続の税額を抑えられる可能性があります。
しかし、その分だけ配偶者が取得する財産が増えるため、二次相続の課税財産も増える可能性があります。
配偶者の税額軽減をどの程度利用するかは、配偶者の固有財産、年齢、生活資金、相続人の人数、小規模宅地等の特例の適用可能性などを踏まえて判断します。
Q15.相続税だけを基準に遺産分割を決めてもよいですか?
A.税額だけでなく、配偶者の生活保障や財産の管理、家族の希望なども考慮する必要があります。
相続税の合計額が最も少ない分割方法であっても、配偶者が自由に使える預貯金が不足する場合や、自宅の所有者と居住者が異なることで将来の管理が複雑になる場合があります。
また、不動産を共有すると、将来の売却、建て替え、担保設定などに共有者全員の合意が必要になることがあります。
相続税のシミュレーションは重要ですが、税額だけでなく、残された家族の生活と財産管理まで含めて分割方法を検討することが大切です。
Q16.配偶者の税額軽減で納税額が0円になる場合も、申告は必要ですか?
A.配偶者の税額軽減を適用して納付税額を0円にする場合は、原則として相続税申告書の提出が必要です。
配偶者の税額軽減は、相続税申告書に税額軽減の計算内容を記載し、遺言書や遺産分割協議書の写しなど、配偶者が取得した財産を確認できる書類を添付して適用します。
遺産総額が基礎控除を超えている場合は、「配偶者には相続税がかからないから申告も不要」と判断しないよう注意が必要です。
小規模宅地等の特例を適用して納税額が0円になる場合も、原則として特例を受けるための申告が必要です。
Q17.相次相続控除を使えば、二次相続の税金を減らせますか?
A.一次相続で二次相続の被相続人となる配偶者が相続税を納めている場合は、一定の要件を満たすと相次相続控除を適用できる可能性があります。
相次相続控除は、10年以内に続けて相続が発生した場合に、短期間に同じ財産へ相続税が重ねて課される負担を調整する制度です。
ただし、一次相続でお父様が配偶者の税額軽減により相続税を納めていない場合は、お父様の相続税額を基礎とする相次相続控除は原則として生じません。
一次相続でAさんが納めた相続税を、お父様の二次相続で相次相続控除として差し引くこともできません。
Q18.二次相続のシミュレーションは、いつ行うべきですか?
A.一次相続の遺産分割協議を確定する前に行うことが重要です。
遺産分割協議が成立し、財産の名義変更や相続税申告が完了した後に、取得割合を変更することは簡単ではありません。
特に、遺産総額が基礎控除を大きく超える場合、配偶者が固有財産を多く所有している場合、自宅や賃貸不動産が含まれている場合は、一次相続と二次相続の税額を事前に比較することが重要です。
複数の分割案について、一次相続の税額、二次相続の想定税額、合計税額、納税資金を比較したうえで、家族に合った分割方法を選択します。
※本事例は、ご相談時点の相続財産、家族構成、同居状況、お父様の固有財産などを前提に行った個別のシミュレーションです。
※約480万円という減額効果は、当初検討していた遺産分割案と、実際に選択した遺産分割案における一次相続・二次相続の想定税額を比較したものです。
※二次相続の税額は、相続が発生する時期、その後の生活費、贈与、不動産価格、預貯金の増減、税制改正などによって変わる可能性があります。
※小規模宅地等の特例の適用可否は、土地の利用状況、面積、取得者、同居の実態、申告期限までの居住・保有状況などによって異なります。
※すべてのご家庭で、配偶者と子が同じ割合で取得することが最適になるわけではありません。
※プライバシー保護のため、事例の一部を変更・簡略化して掲載している場合があります。
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