不動産登記における『本人申請』のリスクと専門家の役割
登記とは自分の権利や義務を社会に向けて公示し、保護してもらうための法制度の一つです。
登記には、商業登記や法人登記、成年後見登記や動産譲渡登記などさまざまな種類があります。
そのなかでも世の中的になじみがあるのは、不動産にまつわる不動産登記ではないでしょうか。
物件の購入や相続の場面で必要になる不動産登記の手続きは、司法書士や土地家屋調査士といった専門家に依頼するのが一般的ですが、当事者自らが登記申請を行うことも可能です。
これを『本人申請』と呼びます。
そこで今回は、本人申請で登記を行う場合の流れや注意点などを解説します。
本人申請であればコストが抑えられる?
不動産登記にはいくつか種類があり、たとえば、建物を新築した場合は『建物表題登記』、相続や売買によって物件の所有者が変わった場合は『所有権移転登記』、住宅ローンなどの借り入れの際に、不動産を担保とする場合は『抵当権設定登記』を行います。
登記を行うには、まず申請書やその他必要書類を揃えて、登録免許税を支払ったうえで管轄の法務局に提出する必要があります。
特に問題がなければ申請書が受理され、登記官による審査がはじまります。
審査が無事に終われば、登記が完了し、申請者は3カ月以内に登記所が発行した登記識別情報通知および登記完了証を受け取ることになります。
これらの一連の手続きは、一般的には報酬を支払い、司法書士などの専門家に依頼することになります。
登記の種類や依頼内容、土地や物件の規模、個別のケースなどによって司法書士に支払う手数料は異なります。
当事者が自ら登記を行う本人申請であれば、司法書士などの専門家に支払う手数料はかかりません。
登記にかかるコストを抑えることができるのは大きなメリットです。
しかし、一方でデメリットもあります。
まず、自分で必要書類を揃えるためには、多くの手間や時間を要します。
たとえば、不動産を相続する場合に、相続人が複数いると、全員の戸籍謄本や印鑑証明書、住民票などが必要になります。
また、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本も用意しなければならず、戸籍をさかのぼる過程で、戸籍謄本が消失していたり、破棄されていたりする場合もあります。
昔の戸籍謄本は手書きなので、文字が判別できないケースもあり、一般の人がすべての戸籍を集めることは容易ではありません。
本人申請を行う際には、こういったメリットとデメリットも理解しておくことが大切です。
登記の手間やリスクを軽減する専門家の存在
本人申請の場合は、自ら法務局に足を運ぶことになります。
法務局にある相談窓口で登記に関する相談をすることは可能です。
しかし、あくまで書類の書き方などを説明するだけで、それぞれの事案に応じたアドバイスがあるわけではありません。
また、相談窓口では事前の審査や法的な判断などは行っていないため、書類に不備があった場合にも、指摘をしてくれるわけではありません。
相談窓口は予約制で、時間も限られており、そもそもコロナ対策で窓口による相談を受けつけていない場合もあります。
さらに、申請したあとで書類に不備や記入漏れなどが見つかった場合は、再び法務局に出向いて、補正を行う必要があります。
補正を行わないままだと、申請が却下されてしまい、登記を完了することができません。
一方、司法書士などの専門家に依頼すると費用はかかりますが、必要書類の収集から申請まで一括して代行してもらうことが可能です。
豊富な知識や経験があるため、たとえば、被相続人の戸籍謄本が戦火などで消失していた場合には、役所に焼失証明書を発行してもらうなどの代替措置を取ることもできます。
個人間の不動産のやり取りは別として、不動産会社が仲介する取引には、ほとんどの場合において、指定の司法書士が担当することになっています。
住宅ローンを利用する場合も、金融機関が登記を行う司法書士を指定していることが多く、司法書士への依頼が融資の条件になっています。
登記にかかる手間や時間、リスクなどを考えても、ご自身で登記を行う場合は、まず司法書士事務所で行っている無料相談を活用するのもよいでしょう。
最初にどのような問題が生じるのかを無料相談で確認しておき、司法書士などの専門家に支払う手数料の概算を算出してもらったうえで、検討してはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2022年12月現在の法令・情報等に基づいています。
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